215j 4ヵ月半遅れの三一節記念式典挙行

7月14日午後、大阪民団主催の第101回「三一節」記念式典が挙行されました。実に4ヵ月半遅れの「遅れた三一節」記念式典となりました。 ご推察のとおり、三月一日に向かって日本でもコロナ禍が深刻化したのを受け、感染防止のため、ことしの記念式典を開催しないことにしたのです。行事を強行して感染拡大を招いては一大事という判断にもとづく措置でした。 この式典中止は在日コリアンにとって耐えがたく無念なことでした。70年以上毎年続けてきた行事を開催できないことの心残りは深かったのです。他の国はともかく、かつて植民地・母国だった日本に住みながら差別と抑圧を受けてきた在日コリアンは、とりわけ三一節に対し切々とした思いを抱いているといいます。 こうして、コロナ禍がやや沈静化した機会を捉え、このような思いを振り払おうと、大阪民団は数ヵ月遅れの三一節記念式典を挙行したのです。例年のような参加者約500人の規模ではなく、各支部の幹部を中心に80人ほどに縮小しました。また、検温と手指消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンス維持を徹底して式典を進行しました。 参加者全員が例年以上に厳粛で真摯な表情で式典に臨みました。在日コリアン社会の特殊性に鑑み、式典を開催しないままにせず、4ヵ月遅れで挙行したことを高く評価したいと思います。 例年どおり、私は韓国大統領の祝辞を代読しました。時間の経過とともにコロナ禍をめぐる状況は大きく変化しています。前例のない新型コロナ感染症の脅威に対し国際的連帯を土台に解決を図らなければならない、という一節により切実な意味を感じた次第です。 式典後、7月に百歳を迎えられた金二泰(キムイテ)民団大阪本部常任顧問への記念品贈呈式も行われ、行事に華を添えました。 高宗の葬儀 1919年

214j 四天王寺ワッソの中止と全世界在外公館長会議の開催

2020年7月9日、コロナ禍がもたらした二つのまったく異なることを経験しました。 一つは、1990年から30年のあいだ大阪で開催されてきたイベント「四天王寺ワッソ」が、ことし開催されなくなったというニュースです。 この日の昼、このニュースを伝えようと、大阪ワッソ文化交流協会の猪熊兼勝理事長が大阪韓国総領事館を訪れました。理事会で協議した結果、コロナ禍のために仮装行列の参加者募集がはかどらず、イベント予定日の11月1日までにコロナ禍が終息するか不明な状況に鑑み、中止を決定したということでした。 残念なことです。「四天王寺ワッソ」は、日本と東アジアとの古代からの交流を時代ごとに仮装行列で再現する祭りとして1990年にスタートしました。在日コリアンが最も多く住み、古代から日韓交流が盛んだった大阪地域に着目し、関西興銀のリードで四天王寺と谷町通りで開催されることになりました。 しかし、2001年に関西興銀が破産したため、その年には開催できませんでした。 翌2002年、同じ志の人々の手で祭りが継続されることになりました。 2003年からはNPO法人大阪ワッソ文化交流協会がイベント会場を大阪城よこの浪速宮跡に移して開催しています。当初、パレードを含め参加者の大半は在日コリアンでしたが、最近は日本人参加者の割合が七割になるほど大阪の地方祭りの一つとして定着しているとのことです。 30年の伝統を持つ祭りをコロナ禍のせいで中止するのは余りにも残念なので、猪熊理事長に対し私は、30年の歴史を振り返るシンポジウムなどのイベントに変更することも検討するように提案しました。単にコロナ禍のために中止するのでではなく、コロナ禍がもたらした裂け目を反省と発展のきっかけに転ずることも意義深いと考えたからです。 もう一つは、同日の夜9時から2時間余り実施された、康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官主催の全(世界)在外公館長会議です。全世界に広がる180以上の韓国在外公館の公館長が同時にアクセスするため、必然的に会議の時間帯が日本では夜の時間になったようです。幸い、先約の会食の予定を早めることで調整できました。 世界の在外公館長を画像で同時に接続して会議するという発想は、コロナ禍がなければ思いつくこともなかったでしょう。また、問題があっても「とりあえずやってみよう」というチャレンジ精神がなければ実行できなかったことだと思います。 会議が首尾よく運営できるだろうかと思いながら参加しましたが、予想外に良かったと感じました。デスクトップ画面に200人近い参加者の顔が、切手収集帳の切手のようにべたべた貼り付けられ、顔の判別がむずかしかったものの、こうして一同に会しコミュニケーションできるとことを不思議に思いました。 多くの人が参加する会議のため発言者の数に限りがあり、対話型よりは一方通行型の会議になるほかありませんでしたが、世界共通のコロナ禍の発生のせいで、他の地域の事情や関心、問題がそれぞれ異なることを理解できる意義深い会議でした。 この会議に出席し、コロナ禍のあとはオンライン外交の比重が必然的にかなり重くなるだろうと実感しました。大阪韓国総領事館もこのような傾向に備え、行政職員の人事異動に伴い、最近オンライン担当を新設しました。 コロナ禍が私たちに投げかけた衝撃を多角度から味わう、そんな一日になりました。

213j 日本の韓流と未来志向の日韓関係をテーマにシンポジウム

6月26日、大阪リーガロイヤルホテルで「日本の中の韓流と未来志向的な日韓関係」をテーマにシンポジウムを開催しました。大阪韓国総領事館が主催する、コロナ後における新しい形態による初の行事でした。 2000年初め「冬のソナタ」を皮切りに日本の韓流ブームが起こり、2017年からは BTS (防弾少年団) と Twice に代表される第三次ブームが起きています。また、コロナ禍のなか「愛の不時着」「梨泰院クラス」など韓国ドラマが Netflix を通じて大流行していることは周知のとおりです。でも、なぜそうなったのかはあまり知られていません。 日韓関係が政治的にきわめて難局にあるなかで韓流が人気を維持している理由は何なのでしょうか。この疑問に答えるシンポジウムを総領事館主催で開催したい。そう考えて、ことし初めから計画を練っていました。準備中にコロナ禍が起きましたが、あきらめずに忍耐強く状況を見きわめ、ようやく実施に至ったのです。 コロナ禍が完全に収束していないため、安全確保に特に留意しました。ホテルと協力し、数百人収容できる会場に参加者60人余りの席をアレンジしました。移動制限が解除されず、ソウルから来られなかった第一発表者、韓国コンテンツ振興院の前副院長、金泳德(キム・ヨンドク)氏はウェブに接続して発表し討論することになりました。いかにもコロナ時代の新方式らしい行事です。 参加者を限定しウェブを取り入れた新方式のシンポジウム会場は熱い熱気に包まれました。金泳德氏は、日本以外の世界で韓流がどの程度流行しているか、生産・流通・受容の面から詳細に解説しました。特に韓流の初期に韓国政府がソフトパワーを強化するために文化産業育成に尽力した背景とその成果をわかりやすく数字で表に示しました。 第二発表者、北海道大学大学院メディアツーリズム研究センター長の金成玟(キム・ソンミン)教授は「日本のなかの韓流- 歴史と特徴そして課題」と題した発表でフロア参加者の高い関心を集めました。日韓関係や政治関係の枠組みで韓流を見る従来の解釈をひっくり返す内容が注目されたのです。 金成玟教授は、第二次と第三次韓流のはざま、日韓断絶が始まった2012年に注目し、この年に日本で韓流が消えたわけではなく、新たな転換を行うための年だったとしました。第一次と第二次の東方神起・KARA・少女時代が活躍した2011年までは日韓のローカルな視点で韓流が捉えられ、大衆メディアを中心に韓流が消費された時期であり、2012年以後はグローバルな視野で日本の韓流ファンが自らのチャネルを通じて韓流を楽しみ始めた時期だとしました。 李明博(イ・ミョンバク)前大統領の竹島(独島)訪問など日韓の政治対立もあり、政治的な理由で韓流が消えたように見えましたが、メディアが取り上げなかったライブコンサートや Youtube などのソーシャルメディアを通じて韓流ファンが世界的な韓流トレンドに参加するようになったというのです。金成玟教授は、こうした国境を越えた流れが今後も継続するとの見通しを述べました。 大阪市立大学の伊地知紀子教授が司会進行した第二部討論会では、韓流と民族主義が主なテーマになりました。共同通信客員論説委員で元ソウル特派員の平井久志氏は、韓流が今後民族主義の強化に向かうのか、国際主義の強化に向かうのかという観点から問題提起を行いました。 金成玟教授と在日コリアン三世で吉本興業所属の芸人のカラミ氏、帝塚山学院大学の稲川右樹教授(韓国語教育)ほかが参加した討論は概ね現在の韓流が民族主義に束縛されることなく、文化を文化自体として楽しむ形で流通しており、今後もその傾向が強まるだろうとしました。 シンポジウムを傍聴しながら、政治的脈絡から文化を解釈すると間違いを犯しやすいことを思い、いかに文化の力が大きいかを今さらながら考えました。

212j 大阪・奈良・和歌山・滋賀・京都民団の支部支団長と懇談

6月16日、3月初めに始まった「長征」が3ヵ月余りで終了しました。途中、コロナ禍でしばらく行進が滞りましたが、ついに目標地点を通過したのです。 在大阪韓国総領事館が所管する2府3県(大阪・京都・滋賀・奈良・和歌山)の民団本部に所属する各支部の支団長等と、3月5日から一連の懇談会を始めました。コリアンの諸団体のなかで民団が最も大きく中心的な役割を果たしているところ、その最も重要な活動家は支団長であると考え、懇談会を企画しました。 これまでさまざまな行事に参加し、各府県の民団本部の幹部と多く接触してきましたが、団員と最も身近に活動する各支部の支団長と会話をする機会はありませんでした。この点を反省し、支団長等と連続懇談会を開催することにしたのです。 本格的な新年度事業が始まる前、4月までに連続懇談会をすべて終了する予定でスタートしたのですが、4月に入ってコロナ禍が深刻化し、予定していた日程が狂い始めました。 大阪民団の29支部を対象に3月5日から31日まで5回に分けて開催した後、コロナ禍のため日程を中断せざるを得ませんでした。5 月21日に日本の緊急事態宣言が解除された1週間後、奈良県を皮切りに懇談会を再開し、5月28日の和歌山県、6月12日の滋賀県、6月16日の京都府と、すべての行事を終了しました 。京都民団は大阪民団につぐ規模のため、二度に分けて開催するつもりでしたが、日程が予定より大幅に遅れたため、まとめて実施しました。 第一線に最も近いところで活動している支団長の苦情を聞き、励ますことを目的としましたが、コロナ禍を経たことで、この感染症で苦労しているコリアンを慰め痛みを分かち合う時間が多くなりました。一方、韓国政府がコロナ禍によく対応し、世界的に高い評価を受けている事実が自然と懇談会の定番メニューになりました。コロナ禍の困難のなかコリアンたちの母国愛がいかに熱いか確認できたように思います。 支団長をはじめ、第一線の活動家が異口同音に提起した問題は、団員の高齢化と帰化の増加に伴う団員の縮小でした。それに伴う財政悪化と活動力の低下がほぼ共通して指摘されました。 こうした困難のなか、いくつかの支部は保育や高齢者介護などの新規事業により活力を維持しています。コロナ禍のなか、マスク購入がむずかしかった時期に団員の家を訪ね歩いてマスクを配布したのが好評だったという話もよく聞きました。こうした事例に接し、活動の成否は金額の多寡ではなく、誠意と努力に左右されることを思い知らされました。 コロナ禍という伏兵が現れ困難にみまわれた懇談会でしたが、支団長等との出会いをすべて終了したいま振り返って、実施しなかったより数十倍よかったと考えています。コリアン社会に対する理解の幅が広がり、さらに深まったと思うからです。

211j 朝鮮陶磁の名品を所蔵する大阪市立東洋陶磁美術館

6月11日、関東地方と関西地方が本格的な梅雨(つゆ)に入りました。例年より少し早い梅雨入りだといいます。大阪も最高気温が約30度となり、雨が降ったりやんだりの一日でした。コロナ禍のなか蒸し暑い梅雨の天候を一ヵ月耐えなければならない、と思うと重い気分になります。 雨模様のなか、総領事館の職員とともに大阪市立東洋陶磁美術館を訪ねました。春の人事異動で職員が加わった機会に、所管区域内の朝鮮文化を自らの目で見て体感し、両国間の文化交流について理解を深めるために企画した見学会です。 東洋陶磁美術館は、韓国の国立中央博物館を除いて、高麗青磁や朝鮮白磁など朝鮮陶磁の逸品を最も多く所蔵する世界的にも著名な美術館です。朝鮮の陶磁器を中心に中国と日本の陶磁器の所蔵品も豊富です。 東洋陶磁美術館のコレクションには、大阪韓国総領事館の前身である在日代表部大阪事務所の初代所長、李秉昌(イビョンチャン 1915-2005)博士が寄贈された朝鮮陶磁器を中心とする李秉昌コレクションと中国陶磁器の分野で世界に知られた安宅(あたか)コレクション*があります。美術館には日本の国宝2点と重要文化財13点があります。*安宅英一 (Wikipedia) 李秉昌コレクションは高麗青磁ほかの朝鮮陶磁器301点と中国陶磁器50点からなり、1999年に開設されました。李博士が苦心の末、日韓友好と在日コリアンの自信と誇りを高めたいとの思いから東洋陶磁美術館に寄贈されたものです。韓国に寄贈されたのは国立中央博物館に1点だけといいます。 私たち一行は出川哲朗館長ほかの案内や説明を受け、李秉昌コレクションと開催中の特別展「天目–中国黒釉の美」(6/2-11/8)を見学しました。天目は中国の宋時代(960-1276)に黒釉をかけて焼成した茶碗です。今回の展示では油滴天目茶碗のなかで唯一国宝に指定されている美術館所蔵の茶碗(南宋)も公開されています。 李秉昌コレクションは美術館3階に常設展示され、特別展の規模に応じて縮小展示されます。これまで訪問したときはいずれも縮小され、多くの作品を見ることができませんでした。今回は通常展示でしたので、コレクションを満喫できました。自ら巨額を投じて収集した愛蔵品を日韓友好と在日コリアンのプライドのため、惜しみなく寄贈されたのです。博士の遺志が十分に生きていることを感じます。 日本の大阪のまんなか、中之島にこうした朝鮮陶磁器の美を堪能できるすぐれた美術館があります。人気の Moto Coffee に行列をなすほど来訪する韓国の若者たちは、そこから徒歩5分の美術館にはやって来ない、と美術館の関係者が残念がっていました。美術館があることを知らないからで、知っていて来ないわけではないでしょう、と私は弁護したのですが。

210j テレワークと韓国系民族学校のオンライン授業

コロナ禍がもたらした新しい生活様式のなかで何よりも際立っているのは、インターネットを利用したリモート業務(remote work)だと思われます。感染防止のため、できるだけ人々の接触を避けて仕事しなければならない状況から生まれた新たな光景です。 日本のようにインターネット文化が必ずしも十分に定着していない社会においても、否応なくインターネットによるテレワーク(在宅勤務)を導入せざるを得ない企業が増えています。外国公館のように機密事項を含む機微情報を扱うために在宅勤務がむずかしい職場でも、セキュリティ対策を講じたうえでビデオ会議を実施しています。「必要は発明の母」という格言を改めて身近に感じます。 コロナ禍のなか、私もビデオ会議に二度参加しましたが、直接会って話すより不便な点がないわけではないものの、予想したよりはるかに便利に思いました。会ったときの感情の無駄などを考えると、かえってよい面もあるようです。 韓国では本格的に学校での授業が開始される前に、全国すべての学校でオンライン授業を実施しました。他方、日本では一部の大学を除き、あまり活発に行われなかったように思います。日韓におけるインターネットをめぐる環境と文化や意識の違いが反映されていると思われます。 こういう状況のなか、関西の韓国系学校の建国小中高等学校・金剛学園・京都国際学園はいずれも日本の教育法に基づく文科省認可の一条校ながら、インターネットを利用した遠隔授業を実施しています。韓国の学校におけるオンライン授業に刺激を受けたことも大きいと考えられ、韓国的なインターネット文化を色濃く反映しているように思います。 これら韓国系民族学校のオンライン授業が、「韓国系」という要素と並ぶ、もう一つのブランドになることに注目した在大阪韓国総領事館は、これら三校のオンライン授業を積極的に支援することにしました。5月28日には、三校のオンライン授業を推進する教員たちを招いて、発表と意見交換の会を催しました。 発表を聞いて、インターネット環境が十分に整備されていないなかで奮闘する教員の苦労をまざまざと見せつけられました。三校が異なるプラットフォームを使っているのも注目されます。 建国学校はインターネットのバンド機能を使って遠隔授業を進めており、生徒も参加してバンド機能を利用した授業の方法を紹介しました。金剛学園は日本のチャットアプリを使った授業をしています。同学園のオンライン授業のようすは5月8日に関西テレビでも紹介されています。京都国際学園は YouTube で作成した教材を学校のサイトに載せる方式を採用しています。残念なことに、これらの授業は韓国の学校とは違い、正規の授業日数に含まれないといいます。 参加した教員たちは、他校の発表を見て活発に意見を交わしていました。明確なモデルがないなか、他校の授業方法を見て大いに参考になったと参加者は述べています。今後さらにやり取りを重ね、教材や運営方式を共有していくこととしました。教育内容と方法をめぐって民族学校三校が事実上初めて合同協議を行ったという点でも、今回の会は意義深いと思われます。 在大阪韓国総領事館は民族学校三校のインターネットを通じた遠隔教育を活性化するため積極的に支援していく予定です。

209j 在大阪韓国総領事館も25日から通常勤務に

5月21日から東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・北海道を除く日本全域の新型コロナ感染症による緊急事態宣言が解除されました。もちろん、在大阪韓国総領事館が所管する大阪府・京都府・滋賀県・三重県・和歌山県も解​​除対象地域に含まれています。 とはいえ、市井の人の表情と街のムードにはまだ緊張感が漂っています。コロナ以後の世界がコロナ以前に戻るのは容易なことでないと思われます。 緊急事態宣言の解除に伴い、総領事館も25日から交代制の在宅勤務を通常勤務体制に移行します。1ヵ月余りぶりの通常勤務ですが、新型コロナ感染症が完全に終息していないため、感染予防対策を徹底し、維持しながら勤務することにしました。 コロナ禍の鎮静化に伴い、これまで延期してきた対外的な活動も徐々に再開しています。 解除前日の20日には、大阪府にある進歩的コリアン団体のウリ民主連合(会長 イ・チョル、在日コリアン良心の囚人の会会長)の事務所を訪ね、新型コロナ感染症の防護用マスクを贈呈しました。総領事館としての訪問は初めてのことです。 朝鮮半島の統一と民主主義の発展、人権擁護、国際親善を支持するオールドカマーとニューカマーが2017年末にこの団体を結成し、韓国光州市での5・18記念式開催や在日コリアンの民族教育支援活動を行ってきました。マスク贈呈後、会員と活動方針などについて意見交換し、今後、総領事館と協議しながら在日コリアン社会の発展と日韓友好に協力していくこととしました。 21日には、3月初めから実施してきた民団各支部の支団長との懇談会を再開しました。大阪民団の29の支団長との懇談会を終えた3月末以来、コロナ禍のため中断していたのです。この日は奈良市に行き、奈良民団所属の支団長に会いました。奈良民団には10支部があり、5支部は奈良民団本部が直轄しています。残り5支部から3人の支団長が出席しました。イ・フン奈良民団団長など本部の幹部も3人参加しました。 自然と新型コロナの話題から始まりましたが、支団長は韓国が新型コロナ感染症対策に成功しているのを見て鼻高々だと誇らしげに話しました。在日コリアンの士気に最も大きな影響を与えるのは、やはり母国の力だと実感しました。また、参加者一同がコリアン社会の縮小、とくに若年層の不参加が大きな問題と困難だと吐露しました。現場でコリアンと最も密に接している支団長が民団活性化の鍵を握っていることを強調し奮闘するように激励しました。 徐々に活動を再開しながら、久しぶりに開放感を感じました。新型コロナであれ何であれ人の恣意的な活動を中止することも悪いことばかりではないようです。

208j 日本の批判的知識人、内田樹先生

最近のように外交活動が全面的に停滞した時期は歴史上いつあったでしょうか。戦争中も動くといわれる外交活動をいま妨害している犯人は、もちろん戦争ではありません、新型コロナウイルスです。 5月13日付け朝日新聞によると、すでに日本に赴任しながら、天皇に信任状を捧呈できないため大使として公式活動ができない国が、トンガ、ルワンダほか5ヵ国あります。また、大使など海外勤務の人事発令を受けながら駐在国に行けず、帰任命令を受けながら帰国できない日本の外交官は数十人に達するといいます。 コロナ禍のため航空便が途絶えるなど、移動が制限されているためですが、このような状況は日本だけの特殊なことではありません。人事発令に伴う移動制限だけでなく、赴任地で勤務している外交官の活動も大きく制約されているのです。 新型コロナ感染症に伴う緊急事態宣言下の大阪も例外ではありません。できる限り接触を回避するようにとの指示のためか、予定していた駐在員との約束が相つぎ取消しまたは延期されています。総領事館の職員も感染防止のため交代で在宅勤務しており、長いあいだ顔を見られないこともあります。 こんな状況のなか、13日、韓国でも広く知られている日本の批判的知識人、内田樹(うちだたつる)先生にお会いしました。 本年2月に出版された『サル化する世界』を読み、大いに共感しました。4月に出版された先生の編著になる『街場の日韓論』は、さまざまな分野で活躍する11人の共著で、経験にもとづく文章が生き生きしていて具体的なのが特色になっています。 共著者に伊地知紀子氏(大阪市立大学教授)ほか知人が数人いることもあり、内田先生の住む神戸でぜひお会いしたいと思い、伊地知教授にお願いしたところ、予定が取れたとの連絡がすぐにありました。 内田先生は合気道7段の武術家でもあります。凱風館という合気道の道場兼ご自宅でお会いし、昼食を含め3時間歓談しました。最近のコロナ禍、関西地域の在日コリアン問題、韓国政治、日韓関係など、話題を自由に転じながら、時の経つのを忘れました。コロナ禍が鎮静化したころに語りつくせなかった話をすることにし、再会を約して帰途につきました。 フランス思想が主専攻の内田先生は、社会のほぼあらゆるイシューについて批判的な視点から精力的に発信しています。単著と共著を含め著作は数十冊に上ります。韓国でも10冊余りが翻訳されているようです。武道で鍛えたせいか、70歳というのに、先生は若者に劣らぬ整った体型を維持し、奥深い目には知性美が溢れています。 内田先生と出会い、コロナ禍で疲れた心身ともに気が満ちたように感じます。久々の楽しく意義深い時間を堪能しました。

207j 苦難を共有できるのは苦境にある人々

韓国では国会議員選挙をやり遂げるまで新型コロナ感染症の拡大を抑え込んでいます。他方、日本では東京・大阪ほか7都道府県に緊急事態宣言が出されて1週間過ぎても、火の手が収まる気配が見えません。全国で1日4-5百人あまり感染確定者が出ています。 日本政府もようやく PCR 検査を大幅に増やし、人々がみな人との接触を80%以上減らすよう繰り返し訴えています。16日夜には、これでも不十分と考えたのか、日本全国に緊急事態宣言を拡大しました。選別的な検査を行ってきて感染経路を特定できない感染確定事例が過半に達しているので、避けがたい選択だと思われます。 問題は、会社では在宅勤務環境が整備されておらず、商店に対して補償のない休業を強要している点にあり、不備だらけなのは仕方ありません。にもかかわらず、感染確定者数が予想より急上昇しないのは、<言われたことをよく聴く国民性>によるところが大きいと思います。 日本政府による人との接触の大幅な自粛要請とたゆまない感染確定者の発生に応じ、在大阪韓国総領事館も14日から民願室などの行政職員をグループ編成にしてシフト勤務体制に入り、外部の活動もほとんど皆無にしました。 このような時、もっとも重要で容易でないのは現地のコリアンを支援することです。駐在国の国民と比べ、コリアンの医療サービスが脆弱なためです。幸い、在日コリアンの感染者はまだ発生していないので、徹底した予防に尽力しなければなりません。 同病相憐れむという言葉があります。コロナ禍が生じるや、某コリアン団体がマスクを集めてコリアンに配布するという心温まることがありました。苦難を共有できるのは、やはり苦境にある人々なのです。 大阪民団は、マスク5千枚を29支部を通じてコリアンに配布しています。あるコリアンは「お店に行って買おうとしても購入できない。こんなことがあって、今さらながら民団の必要性を感じた」と述べています。商人たちの近畿商友会も独自のネットワークを通じて2万枚のマスクを中国から入手し、高齢のコリアンなどに配布しています。 在大阪韓国総領事館も災害救援用に確保していたマスクの一部を、少量ながら、4月1日と2日に所管地域のコリアン老人介護施設5カ所を訪問して渡しました。

206j 第20代総選挙の在外投票率 48.5%

コロナ禍のなか、第21代韓国国会議員選挙の在外投票が全世界の約半分の地域で実施されない事態となりました。2012年4月の第19代国会議員選挙のときに導入されて以来、今回が5回目となる在外投票において、このような事態が生じたのは初めてです。 幸い、日本地域では4月1日から6日に在外投票が無事に実施されました。在大阪韓国総領事館の所管地域でも何事もなく実施されました。総領事館1階のギャラリーに主投票所を設け(4月1日-6日)、京都民団本部と和歌山民団本部でも追加の投票所を運営しました(4月3日-5日)。 これまで国会議員選挙と大統領選挙の在外投票をそれぞれ2回実施しました。大統領選挙の投票率が国会議員選挙のそれより高く、回を重ねるごとに投票率が低下する傾向にありました。在大阪韓国総領事館の所管地域における過去の投票率は以下のとおりです。 2012年4月第19代総選挙 61% (2407/3945人投票) 2012年12月第18代大統領選挙 76.2% (5964/7826人投票) 2016年4月第20代総選挙 26.7% (1706/6382人投票) 2017年5月第19代大統領選挙 54.1% (4338/8018人投票) これまでの傾向からして、総選挙の在外投票導入から時間が経ったこともあり、​​今回の総選挙は投票率が大幅に低下すると見られていました。しかし、結果的に選挙人4940人のうち2397人が投票して48.5%を記録し、やや意外な結果となりました。 なぜこのような結果になったのか正確にはわかりませんが、これまでの流れとは異なり、新型コロナ感染症拡大さなかの高い投票率だった点を考慮すれば、十分に分析する価値があると思われます。 関係筋によれば、韓国内における選挙に対する高い関心が在外国民にも影響を与えたといいます。また、数回の選挙を経験して在外投票に積極的な層を中心に選挙人登録するための投票とみられるということです。在外投票者には、韓国に住所を有する在外不在者と国内住所のない在外選挙人があります。後者の場合、2回連続して投票しないと選挙人名簿から削除され、投票するには再び選挙人名簿に登録しなければなりません。こうした過程を通じて投票に積極的な層が残ったという推論です。在外不在者は選挙のたびに登録しなければならないため、比較的投票に積極的だと見ることができます。 コロナ禍に関わる日本の特殊事情が反映されたという分析もあります。日本政府が新型コロナ感染症に伴う緊急事態をいつ宣言するか不明な状況が、在外投票の序盤から早く投票するように仕向けたというのです。実際、6日間の投票期間の中後半より序盤に投票者数が多かったのです。日本の緊急事態宣言は投票がすべて終わった後の7日午後に発出されました。 どのような要因であれ投票率が高いのはよいことです。どうせなら50%を越していたらとも思いますが、少し手前の48.5%にとどまったのが残念ではあります。